ベルティングボイスとは?意味・英語・どんな声か
ベルティングボイスとは、地声(チェストボイス)の響きを保ったまま、高い音を大きな声量で力強く歌う発声のことです。ミュージカルのクライマックスや、ポップス・ロックのサビで「叫んでいるように聞こえるのに、音程も響きも崩れない」あの声がベルティングボイスにあたります。単に「ベルティング」「ベルト」と呼ばれることも多く、ボイストレーニングではミックスボイスの次に目指す上級の歌の技術として扱われます。
ベルティングボイスは英語でどういう意味?
ベルティングボイスは英語の belt(ベルト)から来た言葉です。英語の動詞 belt には「強く打つ」「力いっぱい歌う」という意味があり、「belt out a song(曲を声を張って歌い上げる)」のように使われます。英語圏では belting(ベルティング)や belt voice と呼ばれ、ブロードウェイなどのミュージカルで発達した歌い方として知られています。「ベルティングボイス」という言い方は和製の組み合わせに近く、英語の文献では belting・belt と書かれるのが一般的です。
どんな声?ベルティングボイスの特徴
ベルティングボイスの歌を聴くと、次のような特徴が共通しています。
- 地声のような明るく芯のある音色で、高音でも裏声っぽく聞こえない
- 大きな声量で、バンドやオーケストラの音に埋もれず遠くまで届く
- 話し声や呼びかけの延長のように、歌詞の言葉がはっきり聞き取れる
- ロングトーンは真っすぐ伸ばし、語尾で少しだけビブラートをかけることが多い
クラシックの声楽(ベルカント)が喉を下げて深く丸い響きを作るのに対し、ベルティングボイスは明るく前に飛ぶ響きを優先します。どちらが正しいというより、ジャンルが求める音色が違うと考えるとわかりやすいでしょう。
ベルティングボイスの種類
分け方は流派や指導者によって異なりますが、歌の現場ではおおむね次の3種類に分けて説明されることが多いです。
- 地声寄りのベルト(フルベルト)
- 地声の重さをできるだけ残した、最も迫力のあるベルティング。ロックのシャウトに近く、声帯への負荷も大きいため、使うのは曲の一番の山場に絞ります。
- ミックスベルト
- 地声の響きにミックスボイスの軽さを混ぜ、高い音域まで負担を抑えて張る歌い方。J-POPのサビや、音域の広い現代のミュージカル曲で多く使われます。
- スピーチ系のベルト
- 明るい話し声の延長で、鼻にかかったような鋭い響き(トゥワング)を使うベルティング。ミュージカルで台詞から歌へ自然につなぐ場面でよく聞かれます。
声区で整理すると、ベルティングボイスは新しい声区ではなく、地声の声区を高音まで強く使う歌い方です。声区全体の関係は声区の記事で解説しています。
ベルティングボイスの仕組み|声帯・筋肉・共鳴
ベルティングボイスの仕組みは、「声帯は地声の閉じ方のまま」「喉の周りは締めずに」「息の圧力は体幹で支え」「響きは口の中で明るく前へ」という4つの条件がそろったときに成り立ちます。どれか1つが欠けると、ただの張り上げや、裏声に逃げた声になってしまいます。ここでは声帯・筋肉・共鳴の順に、ベルティングボイスの中で何が起きているかを見ていきます。
声帯:地声の閉じ方のまま高音へ上がる
声の高さは、主に2つの筋肉の綱引きで決まります。声帯そのものの中にあって声帯を縮めて厚くする甲状披裂筋と、声帯を前後に引き伸ばして薄くする輪状甲状筋です。地声(チェストボイス)は甲状披裂筋がよく働いた厚い声帯の振動、裏声は輪状甲状筋が優位になった薄い声帯の振動だと説明されます。
ベルティングボイスは、高い音でも甲状披裂筋の働きを保った地声型の声帯の振動です。声帯が1回振動するあいだに閉じている時間の割合が長く、研究では「振動周期の半分以上、声帯が閉じている」状態が特徴として挙げられています。声帯がしっかり閉じるので、少ない息でも大きな音になり、明るく芯のある地声の音色が高音まで続きます。
ただし、プロの歌手を測った研究の中には、ベルティングと声楽的な歌い方で声帯の閉じ方に大きな差が見られなかったという報告もあります。「ベルティングらしさ」は声帯だけでなく、次に説明する喉の形と共鳴の作り方からも生まれると考えておくとよいでしょう。
筋肉:喉の周りは締めず、体幹で息を支える
高い音を地声の閉じ方で出すと、声帯の下の息の圧力(声門下圧)は大きくなります。この圧力を喉の筋肉で押さえ込むのではなく、体幹の筋肉で支えるのがベルティングボイスの要点です。お腹まわり(腹筋群)、背中、肋骨の間の筋肉が息の出口を安定させ、喉には「声帯を閉じる」以外の余計な仕事をさせません。
喉の位置(喉頭)は、クラシックの声楽より少し高めになるのが一般的です。これは喉を締め上げているのではなく、話し声や呼びかけに近い位置に落ち着いている状態です。反対に、首の筋肉が浮き出るほど力んだり、あごが前に突き出たりするのは、ベルティングではなく喉締めのサインです。
共鳴:口腔共鳴が主役、鼻腔共鳴は明るさの隠し味
ベルティングボイスの響きを作るのは、主に口の中の空間を使う口腔共鳴です。口を縦にも横にもほどよく開け、「エ」や「ア」に近い明るい母音で響きを前歯の裏あたりに集めると、声量が大きくても耳に刺さりにくい、張りのある音色になります(口腔共鳴の記事)。
さらに、喉の奥(喉頭蓋の周り)を少し狭めて鋭い倍音を足す「トゥワング」を加えると、少ない力で声が遠くまで届くようになります。トゥワングは鼻にかかったような響きに聞こえるため、鼻腔共鳴と一緒に語られることがありますが、鼻腔共鳴を強くしすぎると鼻声になり、ベルティングの太さが失われます。鼻腔共鳴は明るさを足す隠し味程度にとどめるのがコツです(鼻腔共鳴の記事)。
ミックスボイス・ヘッドボイス・裏声・張り上げとの違い
ベルティングボイスは、ミックスボイスやヘッドボイスと同じく「高音を出すための発声」として並べて語られるため、違いがわかりにくい言葉です。最も大きな違いは、声帯を地声寄りに重く使うか、裏声寄りに軽く使うかという点にあります。まず全体を表で比べてから、それぞれの違いを見ていきましょう。
| 発声 | 声の質感 | 声帯・喉の使い方 | 主な場面 |
|---|---|---|---|
| ベルティングボイス | 地声の迫力のまま大音量 | 地声の閉じ方を強く保ち、喉は締めない | サビの山場、ミュージカルの見せ場 |
| ミックスボイス | 地声っぽいが軽く柔らかい | 地声と裏声の中間の重さ | J-POPの高音全般 |
| ヘッドボイス | 芯のある澄んだ高音 | 裏声系で、声帯はしっかり閉じる | バラードの高音、合唱 |
| 裏声(ファルセット) | 息まじりで柔らかい | 裏声系で、声帯の閉じは弱い | 語尾の抜き、優しい表現 |
| 張り上げ(喉締め) | 苦しそうで音程がぶら下がる | 地声のまま喉を締めて押し上げる | 避けたい癖 |
ミックスボイスとの違い
ベルティングボイスとミックスボイスの違いは、地声の重さをどこまで残すかです。ミックスボイスは、地声の重さを少しずつ減らして裏声の軽さを混ぜ、地声っぽい音色のまま高音を楽に出す発声です。ベルティングボイスは、そこからさらに地声の重さと声量を上乗せした状態と考えるとわかりやすいでしょう。
両者は対立するものではなく、境目はグラデーションになっています。前の章で紹介した「ミックスベルト」はちょうどその重なりにあたり、指導者によってはミックスボイスの一種として扱うこともあります。一般に、ミックスボイスで地声と裏声をなめらかにつなげられることが、ベルティングボイスの土台になります。ミックスボイスがまだ不安定な段階でベルティングに挑戦すると、高音で喉を締める癖がつきやすいため、順番はミックスボイスが先です(ミックスボイスの記事)。
ヘッドボイス・裏声との違い
ベルティングボイスとヘッドボイスの違いは、地声系か裏声系かです。ヘッドボイスは声帯を薄く引き伸ばした裏声系の発声で、同じ高さの音を出しても、ヘッドボイスは澄んで遠くに抜ける響き、ベルティングボイスは叫ぶような迫力のある響きになります(ヘッドボイスの記事)。
裏声(ファルセット)との違いはさらに大きく、裏声は声帯の閉じが弱く息の混ざった柔らかい声です。ベルティングボイスで裏声に「ひっくり返る」のは、声帯の閉じ方を地声型に保てなくなったサインです。曲の中では、ベルティングで張ったあとに裏声で抜くなど、両者をあえて切り替えて表情をつける使い方もよくされます。
張り上げとの違いと「うるさい」と言われる理由
ベルティングボイスと最も混同されやすいのが、地声のまま喉を締めて高音を押し上げる張り上げです。どちらも大きな声で高音を出しますが、張り上げは喉の周りの筋肉で声帯を締め付け、喉の位置が上がりきってしまうため、音程が下にぶら下がり、声がつぶれて苦しそうに聞こえます。ベルティングボイスは声帯をしっかり閉じながらも喉の周りは自由で、音程も響きも安定しています。
ベルティングボイスが「うるさい」と言われてしまうのは、多くの場合、次のどれかが原因です。
- 曲の最初から最後まで同じ音量で張り続け、強弱がない
- トゥワングが強すぎて、高い倍音が耳に刺さる
- 実は張り上げになっていて、苦しそうな音色が聞き手を疲れさせる
- カラオケでマイクを口に近づけたまま大声を出している
ベルティングは曲の一番の山場で使うから映える技術です。Aメロは話し声に近い音量で歌い、サビの決めどころだけ張るように配分すると、うるさいという印象はぐっと減ります。
ベルティングボイスの音域と最高音の目安|男性・女性
ベルティングボイスは「この音から上」という決まった音域を持つ声区ではなく、地声の響きで張れる範囲のことです。そのため音域には個人差が大きく、声の高さのタイプや練習量によって変わります。ここでは、ボイストレーニングやミュージカルの現場で目安として語られることの多い範囲を、男性・女性に分けて紹介します。音名は日本のカラオケで一般的な表記(hiA = A4、hiC = C5)です。
男性のベルティングボイスの音域
男性の場合、話し声より少し高い mid2E(E4)前後から hiA(A4)あたりまでが、ベルティングボイスで力強く張りやすい範囲です。J-POPやロックの男性ボーカル曲は、サビの最高音が hiA〜hiB(A4〜B4)あたりに置かれていることが多く、ちょうどこの範囲の上端を張る歌い方になります。
十分に練習を積んだテノールや、ハイトーンが持ち味のボーカリストは、hiC(C5)前後の高音までベルティングで張ることがあります。ただし、これは地声の閉じ方と喉の自由を両立させる高度なコントロールがあってこそで、最初から目標にする高さではありません。まずは mid2G〜hiA を楽に張れることを目指し、その上はミックスボイスや裏声に切り替える判断ができることのほうが大切です。
女性のベルティングボイスの音域
女性の場合、地声で張りやすいのは hiA(A4)から hiC〜hiD(C5〜D5)あたりまでが一般的です。女性は地声と裏声の切り替わり(喚声点)が mid2E〜mid2G 付近にある人が多く、その上を地声の響きで張るのがベルティングボイスの見せどころになります。
かつてのブロードウェイ作品では、女性のベルトは hiC(C5)前後までが目安とされていましたが、近年のミュージカル曲やポップスでは hiE(E5)前後、さらにその上をベルティングで歌う曲も増えています。高い音ほど声帯への負荷は大きくなるため、曲のキーに合わせて無理に最高音を張らず、キーを下げて練習するのが上達への近道です。
高音でベルティングするときの注意点
高音になるほど、声帯を地声の閉じ方に保つための息の圧力が大きくなり、喉を締めたくなる力も強くなります。高い音を張るときは、次の3点を意識してください。
- 母音を少し横に開き、「イ」「ウ」は「エ」「オ」寄りに崩して響きの通り道を広げる
- 音が上がるほど息を増やすのではなく、体幹の支えを強めて息の量を安定させる
- 最高音を出したら長く伸ばしすぎず、裏声や次のフレーズへ早めに逃がす
高音を張る歌い方のお手本は、SING YOUR HEART の高音・ミックスボイスのお手本になる名盤で、聴きどころの曲と一緒に紹介しています。
ベルティングボイスの出し方・やり方と感覚
ベルティングボイスの出し方は、いきなり高音を大声で出すことではありません。話し声の呼びかけという、誰でも持っている「地声の強い声」を出発点にして、少しずつ歌の高さへ持ち上げていくのが基本のやり方です。ここでは5つのステップで手順を紹介します。喉に痛みやイガイガを感じたら、その日はすぐに中止してください。
ベルティングボイスの出し方5ステップ
- 呼びかけの声を出す:少し離れた人を呼ぶつもりで、「ヘイ!」「おーい!」と話し声の高さで短く言います。怒鳴るのではなく、明るく呼び止める声です。お腹から背中にかけて自然に力が入るのを確かめます。
- トゥワングを足す:猫の鳴き声のように「ニャー」「ネェー」と、鼻にかかったような明るく鋭い音を出します。喉の奥が少し狭まり、小さな力で声がよく通る感覚をつかみます。
- 呼びかけを短く歌う:①と②の感覚を混ぜた「ヘイ!」を、話し声より少し高い音程で短く歌います。ドレミの「ソ・ミ・ド」のように上から下へ降りる短い音型から始めると、喉が上がりにくくなります。
- 半音ずつ上げる:同じ音型を半音ずつ上げていきます。母音は「エ」「ア」の明るい母音にし、音が高くなるほど口を縦に少し開けます。裏声にひっくり返る、または喉が詰まる手前の高さが今の上限です。
- 歌詞に移す:練習曲のサビの中の1語だけを選び、その語だけを④の感覚で張ります。前後は普段の声で歌い、張る場所を1点に絞ります。
ベルティングボイスの感覚
正しくベルティングできているときの感覚は、「大声を出している」というより「声が勝手に前へ飛んでいく」という感じに近いものです。よく語られる感覚を、できているときとできていないときで比べると次のようになります。
| 体の部位 | できているときの感覚 | 張り上げになっているときの感覚 |
|---|---|---|
| 喉 | しっかり鳴っているのに、苦しくない | 詰まる・痛い・声がつぶれる |
| 響き | 口の前や顔の前で鳴っている | 喉の奥にこもる |
| 体 | お腹から背中が広く張る | 首や肩に力が入る |
| 音程 | 狙った高さにすっと当たる | 下からずり上がる・ぶら下がる |
録音して聴き返すのも有効です。自分では「叫んでいる」と感じても、録音では明るく伸びやかに聞こえていれば、喉ではなく響きで鳴らせている証拠です。
ベルティングボイスのコツ
- 話すように歌う:歌い上げようとせず、言葉を相手に届けるつもりで子音をはっきり発音すると、地声の閉じが自然に保たれます。
- 音量は7〜8割にとどめる:全力の大声は喉締めの入口です。マイクがあれば8割の声量で十分な迫力が出ます。
- 母音を明るく横に開く:「ア」は「エ」寄り、「オ」は「ア」寄りに少し崩すと響きが前に集まります。
- あごを突き出さない:高音で顔が上を向くと喉頭が引き上げられます。目線は正面のまま歌います。
- 息を押し込まない:息の量を増やすのではなく、体幹で支えて一定に送り続けます(腹式呼吸の記事)。
ベルティングボイスの練習方法とトレーニング
ベルティングボイスは、一度出せたら終わりではなく、喉を締めずに出せる状態を体に覚えさせるトレーニングが必要です。長時間の練習より、短い時間を毎日続けるほうが喉を守りながら上達できます。ここでは1回15分の練習メニューと、続け方、難しいと感じたときの考え方を紹介します。
1回15分の練習メニュー
| 順番 | 練習方法 | 時間 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1 | リップロール・ハミングで低音から高音へ | 3分 | 声帯と呼吸のウォームアップ |
| 2 | 「ニャー」「ネェー」を短く繰り返す | 2分 | トゥワングの感覚を呼び起こす |
| 3 | 「ヘイ!」の呼びかけで「ソ・ミ・ド」を半音ずつ上げ下げ | 5分 | 地声の閉じを保ったまま高さを広げる |
| 4 | 練習曲のサビの1フレーズを張る | 3分 | 歌の中で使う |
| 5 | 裏声の軽いスライドとハミング | 2分 | クールダウン |
最初のウォームアップを省くと、冷えた声帯にいきなり強い負荷をかけることになります。リップロールのやり方はリップロールの記事で詳しく解説しています。3番目の呼びかけの練習は、音の高さを欲張らず、「喉が楽なまま張れる一番上の音」を毎回確認するつもりで行ってください。
トレーニングの頻度と上達の目安
ベルティングの練習は、1日15〜20分程度を週に4〜5日続けるくらいが無理のないペースです。喉は筋肉と粘膜でできているため、強い発声をした翌日は休ませる日を作ると回復が追いつきます。上達のスピードには個人差が大きく、すでにミックスボイスが安定している人なら数週間で感覚をつかむこともあれば、数か月かけて少しずつ張れる高さが広がっていく人もいます。
上達しているかは、次のような変化で確かめられます。
- 同じ高さの音を、前より小さな力で張れるようになった
- ベルティングで歌ったあとの喉の疲れが減った
- 録音で聴いたとき、音程のずり上がりが少なくなった
ベルティングボイスが難しいと言われる理由
ベルティングボイスが難しいのは、「声帯は強く閉じる」のに「喉の周りは締めない」という、一見矛盾した状態を同時に作る必要があるからです。強く閉じようとすると喉全体に力が入り、力を抜こうとすると声が裏返る。このバランスを見つけるまでに時間がかかります。
「ミックスボイスも難しいのに、ベルティングはもっと難しい」と感じる人も多いでしょう。ベルティングボイスは、ミックスボイスで地声と裏声をつなぐ技術に、さらに声量と地声の重さを上乗せする技術です。ミックスボイスが難しいと感じている段階なら、無理にベルティングへ進まず、喚声点をなめらかに越える練習を優先したほうが、結果的にベルティングへの近道になります。
独学とボイトレ・レッスンの使い分け
ベルティングボイスは、独学では「張り上げになっていないか」を自分で判断しにくい技術です。録音で確認するだけでは、喉の締め付けや舌の力みまでは見抜けません。ボイトレ教室のレッスンでは、トレーナーが声と体の使い方をその場で聴いて、喉締めになる前に修正してくれます。
レッスンを選ぶときは、ベルティングを多用するジャンル(ミュージカル、ロック、ポップス)の指導経験があるトレーナーかどうかを確認するとよいでしょう。体験レッスンで「ベルティングを練習したい」と伝えれば、合う教え方かどうかを判断できます。教室はボイトレ教室検索から地域・駅で探せます。
ベルティングボイスで疲れる・喉が痛いときの原因と対策
ベルティングボイスは声帯をしっかり閉じて大きな声を出すため、ほかの発声より喉が疲れやすいのは自然なことです。ただし、数曲歌っただけで声がかすれる、喉が痛いという状態は、やり方のどこかに無理があるサインです。よくある原因と対策を整理します。
疲れる原因1:喉の周りの筋肉で声を押している
最も多い原因は、息の圧力を体幹ではなく喉の周りの筋肉で受け止めてしまうことです。首すじが張る、飲み込むときのように喉ぼとけが上がりきる、あごが前に出る、といった状態では、ベルティングではなく張り上げになっています。対策は、第5章の「呼びかけ」のステップに戻り、話し声の高さで楽に張れる感覚を取り戻すことです。鏡を見ながら、首に筋が浮かない範囲で練習してください。
疲れる原因2:張る時間と回数が多すぎる
曲の最初から最後までベルティングで歌い続けると、どれだけ正しい発声でも声帯は疲れます。プロの歌手でも、ベルティングで張るのはサビの決めどころなど限られた場面です。1曲の中で張る場所を2〜3か所に絞り、そのほかはミックスボイスや普段の声で歌うと、喉の疲れは大きく変わります。練習でも、同じフレーズを何十回も張り続けるのは避け、数回ごとに裏声やハミングで休ませます。
疲れる原因3:喉のコンディションが整っていない
乾燥、睡眠不足、風邪気味といったコンディションの悪さも、喉の疲れや痛みにつながります。声帯の表面は粘膜で覆われていて、乾くと振動の効率が落ち、同じ声を出すのにより強い力が必要になります。
- 練習の前後と途中で、常温の水をこまめに飲む
- 空気が乾燥する季節は、加湿器やマスクで喉の湿度を保つ
- 喉がイガイガする日、声がかすれる日はベルティングの練習を休む
喉が痛いときはすぐに中止する
ベルティングの練習中や練習後に喉が痛い、飲み込むと痛む、声がかすれて戻らないといった症状が出たら、その日の練習はすぐに中止し、声をできるだけ使わずに休ませてください。数日休んでも声がれや痛みが続く場合、とくに2週間以上治らない場合は、自己判断で練習を再開せず、耳鼻咽喉科を受診しましょう。痛みを我慢して張り続けると、声帯の炎症を長引かせるおそれがあります。
ベルティングボイスの歌手・アーティスト|男性・女性・ミュージカル
ベルティングボイスを身につけるには、お手本の歌手の声をよく聴き、どこで張ってどこで抜いているかを観察するのが近道です。ここでは、力強い地声の高音で知られ、ベルティングのお手本として挙げられることの多い歌手・アーティストを紹介します。なお、歌手本人が「ベルティングで歌っている」と説明しているわけではなく、聴こえ方からベルティングの参考例として語られることが多い歌手という意味で選んでいます。
ベルティングボイスの男性歌手(日本人)
| 歌手・アーティスト | 聴きどころ | 代表曲 |
|---|---|---|
| 大森元貴(Mrs. GREEN APPLE) | 中低音のしっかりした地声から、ベルティング・ミックスボイス・ファルセットへ瞬時に切り替える | ケセラセラ、ライラック |
| 竹中雄大(Novelbright) | 女性ボーカル曲も原曲キーで歌うハイトーンを、地声の張りのまま響かせる | Walking with you |
| 優里 | サビで声量を上げても締まらない、張りのある力強い高音 | ドライフラワー、ベテルギウス |
| 稲葉浩志(B'z) | ロックの大音量のバンドに埋もれない、鋭く明るいハイトーン | ultra soul |
ミセスの愛称で知られる Mrs. GREEN APPLE の大森元貴さんは、ハイトーンのイメージが強いボーカリストですが、Aメロなどの中低音がしっかり鳴っているからこそ、サビで張ったときの迫力が際立ちます。大森さんの歌は、張る声と裏声の切り替えのタイミングを聴き取る教材としても向いています。Novelbright の竹中雄大さんは、影響を受けた歌手としてホイットニー・ヒューストンやセリーヌ・ディオンといった洋楽の女性ボーカリストを挙げていることで知られ、その影響が力強いハイトーンに表れています。
ベルティングボイスの女性歌手
| 歌手・アーティスト | 聴きどころ | 代表曲 |
|---|---|---|
| MISIA | 豊かな中低音から、伸びやかで力強い高音まで一続きにつなげる | Everything |
| Superfly(越智志帆) | ロックサウンドの中で地声の張りを保ったまま高音を歌い上げる | 愛をこめて花束を |
| ホイットニー・ヒューストン | 静かな歌い出しから、クライマックスで一気に張る強弱の付け方 | I Will Always Love You |
| アデル | 太く芯のある地声を、叫ばずに大きな声量で響かせる | Rolling in the Deep |
女性歌手のベルティングは、地声と裏声の切り替わりより上の音を地声の響きで張る場面が聴きどころです。上の表の歌手はいずれも、曲の最初から張り続けるのではなく、サビやクライマックスに向けて声量を段階的に上げていく構成になっている点に注目してください。
ミュージカルのベルティングボイス
ベルティングボイスが最も発達したのはミュージカルの世界です。台詞から歌へ自然につなげ、劇場の後ろの席まで言葉を届けるために、話し声の延長にある明るく力強い発声が求められてきました。代表的な例として、イディナ・メンゼルが歌う『ウィキッド』の「Defying Gravity」や、ディズニー映画『アナと雪の女王』の「Let It Go」(英語版)、キアラ・セトルが歌う『グレイテスト・ショーマン』の「This Is Me」がよく挙げられます。
日本のミュージカル作品でも、見せ場のナンバーでベルティングが多く使われます。ミュージカルのベルティングは、ポップスよりも言葉の明瞭さと声の持久力が重視されるのが特徴で、1回の公演で何曲も張り続けられる、喉に負担の少ない発声が求められます。
ベルティングボイスの練習曲
ベルティングボイスの練習曲は、「好きな曲」よりも「サビで張る場所がはっきりしていて、最高音が自分の楽に張れる高さに近い曲」を選ぶのがポイントです。張る場所が曲全体に散らばっている曲や、最高音が高すぎる曲は、練習のつもりが張り上げの癖をつけることになりかねません。
練習曲の選び方
- 第5章のステップ④で確かめた「楽に張れる一番上の音」を基準にする
- サビの最高音がその音と同じか、1〜2音低い曲を選ぶ
- 高すぎる曲はカラオケのキー設定で下げて練習する(原曲キーにこだわらない)
- 張る場所がサビの1〜2か所に集中している曲から始める
声を張り上げる表現のお手本になるアルバムは、エッジ・シャウト・パワーのお手本になる名盤で紹介しています。練習曲を歌う前に、お手本の張り方を聴き込んでおくと効果的です。
ベルティングボイスの練習曲一覧
| 曲(歌手) | レベル | 練習ポイント |
|---|---|---|
| ドライフラワー(優里) | 入門〜中級 | Aメロは話すように、サビの高音だけを張る強弱の練習に向く |
| 愛をこめて花束を(Superfly) | 中級 | サビに向けて声量を段階的に上げる配分を学べる |
| Let It Go〜ありのままで〜(松たか子) | 中級 | ミュージカル的なベルティングの入門。台詞のような歌い出しからサビで張る |
| This Is Me(キアラ・セトル) | 中級〜上級 | 英語の子音を立てて言葉を前に飛ばす練習になる |
| ケセラセラ(Mrs. GREEN APPLE) | 上級 | 張る声と裏声の素早い切り替え。キーを下げて部分練習から |
| Everything(MISIA) | 上級 | 長いフレーズの最後まで支えを保って張り切る持久力 |
上級の曲は、原曲キーのまま通しで歌うのではなく、サビの一番高いフレーズだけを取り出して、キーを下げた状態から1つずつ上げていく練習が効果的です。男性が女性の曲を、女性が男性の曲を練習する場合も同じで、サビの最高音が自分の張れる範囲に入るまでキーを動かしてから練習すると、張る感覚をつかみやすくなります。
よくある質問
- ベルティングボイスは誰でも出せるようになりますか?
- 声の高さや声質によって張れる音域には差がありますが、地声で呼びかける声が出せる人なら、その延長としてベルティングボイスの感覚をつかむことは多くの人にとって可能です。まずは話し声に近い高さで張る練習から始め、張れる音を少しずつ上に広げていきましょう。
- ベルティングボイスは喉に悪いですか?
- 正しいベルティングは喉の周りを締めずに体幹で息を支えるため、それ自体が喉を壊す発声ではありません。ただし、張り上げになっていたり、長時間張り続けたりすると喉に負担がかかります。練習は短時間にとどめ、痛みやかすれが続く場合は練習を中止して耳鼻咽喉科に相談してください。
- ミックスボイスができなくてもベルティングは練習できますか?
- 話し声の高さでの呼びかけやトゥワングの練習は、ミックスボイスが未完成でも始められます。ただし、喚声点より上の高音を張る練習は、地声と裏声をなめらかにつなげられるようになってからのほうが、喉締めの癖がつきにくく安全です。
- カラオケでベルティングを使うコツは?
- 張る場所をサビの決めどころ2〜3か所に絞り、ほかは普段の声で歌うことです。マイクは口から少し離し、張る瞬間はさらに少し離すと音割れせず、うるさく聞こえません。キーは原曲にこだわらず、最高音を楽に張れる高さに調整しましょう。
まとめ
ベルティングボイスは、地声の響きを保ったまま高音を大きな声量で力強く歌う発声です。この記事のポイントを振り返ります。
- ベルティングボイスは英語の belt(力いっぱい歌う)に由来し、ミュージカルで発達した歌い方
- 仕組みは「地声の閉じ方の声帯」「締めない喉」「体幹の支え」「口腔共鳴の明るい響き」の4つ
- ミックスボイスより地声寄りで重く、張り上げとは喉を締めない点で違う
- 音域の目安は男性で mid2E〜hiA、女性で hiA〜hiD あたり。練習でさらに広がる
- 出し方は話し声の呼びかけから始め、半音ずつ高さを上げていく
- 練習は1回15分を毎日。喉が痛いときはすぐに中止する
ベルティングボイスは、張り上げとの違いを自分で判断しにくい上級の技術です。独学で行き詰まったら、声を直接聴いてもらえるボイトレ教室で一度チェックしてもらうのがおすすめです。SING YOUR HEART のボイトレ教室検索では、全国の教室を地域や駅から探し、体験レッスンを比べられます。声区全体の関係をおさらいしたい人はチェストボイスの記事もあわせて読んでみてください。

